【 Story 】

マーティン・スコセッシが「ブリリアント!」と絶賛した密室劇の傑作!

人種と宗教をテーマに、他人が抱いているイメージとはどういうものかを暴露するストーリー。 通りや近所や、どこかで普通にすれ違ったりする彼らを、一つのオリに入れたらどうなるか。
真夏の蒸し暑い夜、7人のニューヨーカーと1人のイギリス人が軽犯罪で御用となる。厚いレンズのメガネをかけたジュイッシュ、怒りっぽいブラックとラティーノの青年二人組、アラブ人のタクシードライバー、入れ墨師のアイリッシュ・アメリカン、ブロンクス育ちのイタリアン、性的秘密を持つアジアン、ロンドンから来ていたホワイト、合わせて8人の男が一つの留置場へ。そこには神と名乗るホームレスがいた。時間の流れと共に加速する偏見と批判の嵐。世界の縮図と化したこの房で、神は調停役となれるのか。違いを超えて共生しなければ暮らせないニューヨークの現実を、下品で崇高に仕上げた密室劇の傑作。神の正体とは? 悪魔の正体とは?

【 Review 】

ニューヨーク・タイムズ紙

オフ・ブロードウェイ的伝統さを保ちながら、各キャラクターは独白劇によって彼らの隠された傷つきやすさと、 怒りの背後に脈打つ根本的な人間性を露呈していく。
アル中気味の以前は文学の教授をしていたという神がマンハッタンのダウンタウンにある警察署のオリ(拘置場)に現われる。その神は闘争的なニューヨーカー達の互いの隔たりを、共有できる人間性の世界へ導いていこうとする。
映画は、大男の娼婦にぶたれるオーソドックス・ジュウをちらりと見せたりと きわどい場面も多くあるが、一貫してオフ・ブロードウェイの形而上学的なダイアログ(せりふ)となっている。神はしびれを切らしたように”人生の意味とはそこに意味を持たせ続ける事だ”とゆゆしき事として述べる。このような神の話しがきっかけとなり、同房の男達は次々と告白をしていく。
神はまたニューヨークの人種グループ別代表のような同房仲間に、人間が統計的に簡単に信じてしまうという限界の狭さを広げようと試みる。
総じて演出は厚みがあって、意識しすぎた文学的な実際の脚本より説得力がある。

ピーター・バラカン Peter Barakan(ブロードキャスター)

ニューヨークは人種の坩堝というより、自分のことを棚に上げながら先入観で相手の弱点を突く多民族がひしめき合う、圧力鍋のようなもの。 一触即発の彼らをまとめるのは本当に神業です。

伊藤弥住子(『ニューヨーク・ヒップホップ・ドリーム』著者)

ハードコアなニューヨーク
ユダヤ人、黒人、アラブ系、ヒスパニック、様々な人たちの織りなす人間模様を描いた映画、「ゴッド・イン・ニューヨーク」は人種の違う人間たちが「ホンネ」をぶちまけたシリアスなコメディーだ。
ずっとヒップ・ホップ・カルチャーを追い続けてきた私にとってこの作品の見所は黒人から見たニューヨーク。ラッパー志願のビッグ・ローラービルズ役をボンズ・マローンが演じているのが非常に興味深い。80年代後半よりグラフィティ・アーティストとしてキャリアを築き、ヴァイブ、スピン・マガジンなどでラッパーたちと同じ視点でストーリーを語った当時最年少のブラック・ジャーナリストがボンズ・マローンだった。実際にギャングだったこともあるというハードコアな彼の生き様は音楽業界でもよく知られている。ヒップホップというカルチャーは常に人種問題と背中合わせ、あまりにも日常化した警察の暴行、police brutality への怒りと鬱憤を黒人のビッグがぶちまけるシーンは演じている俳優のボンズ・マローン自身いやというほど体験しているだけに説得力がある。
マローン扮するラッパー志願のBig Rollerbillsは相棒のプエルトリカン、オスカーとタクシーを捕まえようとしてモスリムの運転手に乗車拒否をされ怒って乱暴を働きNYの留置所に入れられてしまう。「黒人はタクシーを停められない」というのはとてもありがちなことで、あの有名俳優のダニー・グローヴァーでさえ同様な経験をしたとメディアに訴えたこともあるほど。ビッグはレコード会社のエグゼクと名乗るイギリス人から「契約してやろうか。」という申し出に対して、「白人のお前らに俺のやりたいことが理解できるはずがない。」と突っぱねた。お金のためでも魂までは売らない……、それが黒人のプライドだから……。 
監督のカメル・アメッドは90年代半ば、「いたずら電話シリーズ」CDで一世を風靡したジャーキー・ボーイズの片割れ。ミリオン・セラーを記録したコメディーCDで、のちに三菱自動車のコマーシャルなどにも使われたほどアメリカでは大当たりした。ユダヤ人やアラブ人などの文化や宗教の違いをネタにさまざまな笑いを提供、NYのあらゆる人種を取り上げて注目された。この映画に登場するキャラクターは土曜日は安息日で絶対に働かないユダヤの商人、黒人嫌いなムスリムのタクシー・ドライバーなどどれも極端だけれど、実際にニューヨークでお目にかかることの多い「リアル」な人物像ばかり。
「人種のるつぼ」、ニューヨークに住み始めて23年………、「ゴッド・イン・ニューヨーク」を見てやっと私にもその言葉の意味がわかるようになったと感じた。