Review
-Le Monde ル・モンド紙
ブッシュの奥深くにある村の牧師になろうと大志を描く若いサウス・アフリカ人が聖地エルサレムに巡礼の旅に出る。ところが、ベンギュリオン空港(テルアビブ近郊)に降り立った瞬間、不法労働の目的で違法に入国したとの疑いで逮捕されてしまう。こういう冒頭シーンは見る者を恐怖に陥れ、若い監督たちがまるでインスピレーション不足かのように思わせる。けれど、その怖れもすぐに消え去ってしまう。「奴隷使い」のシミに姿をかりて表現されている、お金だけが原動力の、機械としてのイスラエル社会という鋭い社会風刺に打ちのめされる。
はからずも移民となったジェイムズはシミの父親に、「僕が興味あるのは農業と宗教だけ」と説明するのだが、老人はそんな彼のなかに「真のキブツニク(ユダヤ人)」を見いだしたのだった。
コメディー感覚で、様々なキャラクターの中からしだいにもっとも顕著なジェイムズの人柄がクローズアップされてくる。シヤボンガ・シブが見事に演じる、最初は高尚で都会ずれしていない未開人が、やがてマネー・ゲームの掟をいたずらに混乱させ、自らの身を任せるようになる。イスラエル人の気質なども幅広く描かれている。
生きることへの執着をむき出しにする年季のはいったペテン師の祖父に見るコミカルなキャラクターは否定できないし、さらにダニー・デヴィートを常に彷彿とさせるシミには最初は嫌悪感をもよおすもののやがてそれは滲みでてくる憐れみへと変ってゆく。おのおののキャラクターが複雑になってくるのに伴って話の筋もどんどん込み入ってくる。息子とその嫁は、不動産業者に土地を売るためにイスラエルに移住してきて以来住んでいるその小屋から、父に出て行ってほしいと思っている。
誤解のないように言っておくが、その土地とはイスラエル人の間のみでの議論の争点であって、パレスチナ人との闘争として言及されているのはついでのこと。ここでの問題点は、祖先の理想の食い違いで引き裂かれ、他の国と同じようになりたいと願うイスラエルが求める正常化、一方で貧しい者たちが富を求めて移民するという運命である。
そういった深刻な問題が軽く扱われている、明るく表現豊かなこの地味な映画(低予算、デジタル・ビデオ使用)は2年前の先輩による破壊的作品「Late Marriage」がそうだったように予期しなかったハッピー・サプライズ作品に仕上がっている。 |